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★蕁麻疹
★仮性アレルゲン
★ハチ刺傷
★エピペン
★アレルギー検査(IgE)の解釈
★即時型食物アレルギー調査結果
★小児の食物アレルギー
★化学物質過敏症・シックハウス症候群
★食物依存性運動誘発アナフィラキシー
★口腔アレルギー症候群
★アレルギー性紫斑病
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<蕁麻疹(じんましん)とは>
蚊にさされたときのように,皮膚がモコモコ,ポコッと盛り上がって,とてもかゆがります.形も大きさもいろいろで,急にできて,たいてい1時間くらいで消えてしまいます.突然出現して,すぐに消えるのが特徴です.
医学的には,「膨疹,すなわち紅斑を伴う一過性,限局性の皮膚の浮腫が病的に出没する疾患で,多くは痒みを伴う」と定義されます.
<病態>
アレルギー性あるいは非アレルギー性の何らかの機序により皮膚マスト細胞が脱顆粒し,ヒスタミンをはじめとする化学伝達物質が皮膚組織内に放出され,皮膚微小血管の拡張と血漿成分の漏出が起こり,紅斑および局所性浮腫(膨疹)を生じます.さらに知覚神経が刺激されて痒みを生じます.
<病型分類>
蕁麻疹と一口に言っても,以下の通り,いろいろあります.
1.特発性の蕁麻疹:
個々の皮疹の出現に関して直接的原因ないし誘因を明らかにし得ないもので,医療機関を訪れる蕁麻疹のなかでは最も頻度が高い.
基本的には毎日またはほぼ毎日症状の出没を繰り返す.発症してからの期間が1カ月以内のものを急性蕁麻疹,1カ月以上経過したものを慢性蕁麻疹と呼ぶ.
背景因子として感染,食物,疲労,特定の薬剤,日内変動などが関与することが多い.
2.特定刺激ないし負荷により皮疹を誘発することができる蕁麻疹:
特定の刺激ないし条件が加わった時に症状が出現するもの
(1)外来抗原によるアレルギー性の蕁麻疹:
食物,薬品,植物(天然ゴム製品を含む),昆虫の毒素などに接触,飲食,吸入,注射などの経路で生体が曝露されることにより起こる.特異的IgEを介して皮膚マスト細胞が脱顆粒するI型アレルギー反応である.
プリックテストやIgE RAST法により抗原を特定することができる.蕁麻疹で医療機関を受診する者の数%以下.
(2)食物依存性運動誘発アナフィラキシー:
小麦やエビなど特定の食物摂取後2-3時間以内に運動負荷が加わることにより生じるアナフィラキシー反応で,蕁麻疹などの皮膚症状を伴うことが多い.原因食物はプリックテストやIgE RAST法により推定することができる.
診断の確定のためには食物および運動負荷による誘発テストが必要であるが,その再現性は必ずしも高くない.
(3)外来物質による非アレルギー性の蕁麻疹:
アレルギー機序を介さずに蕁麻疹が起きるため,I型アレルギーの検査法では原因物質を特定できない.造影剤の静脈注射,豚肉,サバ,タケノコなどの摂取により生じる蕁麻疹はこの機序によるものが多い.
(4)不耐性(イントレランス)による蕁麻疹:
非アレルギー性の蕁麻疹のうち,アスピリンを含む非ステロイド系消炎剤(NSAID)により誘導される蕁麻疹で,他の複数のNSAID,人工食品着色料,防腐剤などの化学物質に対しても過敏性を示すことが多い.
(5)物理性蕁麻疹:
皮膚表面の機械性擦過,寒冷曝露,日光照射,温熱負荷,圧迫,水との接触などにより生じる蕁麻疹を総称して物理性蕁麻疹と呼ぶ.
刺激の種類により,各々,機械性蕁麻疹,寒冷蕁麻疹,日光蕁麻疹,温熱蕁麻疹,遅延性圧蕁麻疹,水蕁麻疹と呼ぶ.
(6)コリン性蕁麻疹:
入浴,運動,精神的緊張など,発汗を生じるような刺激が加わった時に生じる蕁麻疹.痒みを伴うことが多いが,むしろピリピリした感じである.皮疹は出現後数分から2時間程度で消退する.小児および20歳代の若年成人に好発する.
(7)接触蕁麻疹:
皮膚,粘膜が特定の物質と接触することにより生じる蕁麻疹.原因物質に曝露後数分ないし数十分以内に症状が出現し,数時間以内に消退する.「(1)外来抗原によるアレルギー性の蕁麻疹」の一部と「(3)外来物質による非アレルギー性の蕁麻疹」の一部が含まれる.
3.特殊な蕁麻疹または蕁麻疹類似疾患
(1)血管性浮腫:
皮膚や粘膜の限局した範囲に出現する深部浮腫.顔面とくに口唇や眼瞼に好発する.痒みがないことが多い.第1補体成分の機能不全が関与することがあり,遺伝性のことがある.
(2)蕁麻疹様血管炎:
蕁麻疹に似た皮疹を呈するが,皮膚の微小血管の炎症を伴う.皮疹は24時間以上持続し,色素沈着や落屑を残す.検査上,白血球増多,CRP陽性,補体低下などを示す.全身性エリテマトーデスに移行することがある.
(3)振動蕁麻疹:
振動という物理的刺激により誘発される蕁麻疹.物理性蕁麻疹と同様であるが,皮膚深部の局所的浮腫である点が特徴.
(4)色素性蕁麻疹のダリエ徴候:
皮膚局所に色素沈着を認める.皮疹部を擦過するとその部位に一致して膨疹を生じる.これをダリエ徴候と呼び,色素性蕁麻疹について診断的価値が高い.
<原因検索>
「蕁麻疹の原因を検査してください.」と受診される方がいます.御依頼の主旨は「I型アレルギーの検査をして欲しい.」ということのようです.
しかし,蕁麻疹の多くは「1.特発性の蕁麻疹」なので,ほとんどの蕁麻疹で原因を特定することができません.「I型アレルギーの検査」で原因を特定できる可能性のあるのは「2.の(1)外来抗原によるアレルギー性の蕁麻疹」ですが,このタイプは蕁麻疹全体の数%以下です.
このタイプであっても,診断には「I型アレルギーの検査」よりもまず「病歴」や「問診」が重要です.原因を特定できる場合は,「●●を食べた後には蕁麻疹が出現する」というエピソードを繰り返します.食事日誌をつけて,食べた物と蕁麻疹の関係を記録してください.このような記録から「●●が蕁麻疹の原因として可能性が高い」という目星がついたら,「I型アレルギーの検査」をします.
| 蕁麻疹=I型アレルギーではないので, むやみに「I型アレルギーの検査」をしても意味がありません. |
<治療>
(1)飲み薬:
抗アレルギー剤,かゆみ止めの薬を処方します.何度も繰り返してじんましんが出る場合は,飲みくすりを何週間か続けてもらうことがあります.
(2)冷やす:
冷タオルやクーラーで体を冷やすと楽になります.
(3)塗り薬は蕁麻疹そのものには効果がありません.
<こんなときはもう一度診察を>
ゼーゼーと息苦しそうな時,おなかを痛がる時,ぐったりとしている時には再度診察を受けて下さい.
<I型アレルギー反応とは?>
気管支喘息,アトピー性皮膚炎,アレルギー性鼻炎,蕁麻疹(じんましん)などのアレルギー性疾患の多くは,I型アレルギー反応により起こります.
アレルギーを起こす物質すなわちアレルゲンが体内に侵入すると,IgEという免疫グロブリンがマスト細胞と結合します.マスト細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され,粘膜や皮膚に作用して,さまざまな症状を引き起こします.
<仮性アレルゲンとは?>
上記のようなアレルギー反応の経路をとらずに,食品中に含まれているヒスタミンなどの化学伝達物質が組織に直接作用して,あたかもアレルギー反応が起こったかのような症状を引き起こすものを「仮性アレルゲン」と呼びます.
身近な例として,トマトの汁が口のまわりについただけで皮膚が赤くただれたり,やまいもを食べると口のまわりがかゆくなったりすることがありますが,この場合のトマトややまいもが「仮性アレルゲン」です.
<主な化学伝達物質とそれを含む食品>
(1)ヒスタミン:
ホウレンソウ,ナス,トマト,エノキダケ,牛肉,とり肉,発酵食品(パルメザンチーズ,ブルーチーズ,赤ワイン,みそ,醤油など),鮮度の悪い青背魚(サバ,カツオ,マグロ,イワシなど)
(2)アセチルコリン:
タケノコ,トマト,ナス,ピーナッツ(落花生),ソバ,ヤマイモ,サトイモ,マツタケ,クワイなど
(3)セロトニン:
トマト,バナナ,キウイ,パイナップル,メロン,アボガド,ブラム
(4)チラミン:
チーズ,ワイン,チョコレート,アボガド,プラム,バナナ,ナス,トマト,鶏レバー,ニシン酢漬など
(5)フェニルチラミン:
チーズ,赤ワイン,チョコレートなど
(6)イノリン:
サンマ,タラ,サケ
(7)トリメチールアミンオキサイド:
エビ,カニ,イカ,タコ,アサリ,ハマグリ,カレイ,タラ,スズキなど
<注意することは?>
仮性アレルゲンはふだん食べている食品のなかに含まれているので,全てを避けることは不可能です.以下のような注意が必要です.
・一度にたくさん食べたり,毎日食べたりしない
・あくぬきや湯通しをする・加熱調理をする
・アトピー性皮膚炎の悪化時や体調が悪い時には控えめに摂取する
<ハチ死傷事故>
日本では,年間20-30人がハチ刺傷によるアナフィラキシー反応のために死亡しています.ハチはスズメバチ,アシナガバチ,ミツバチに大きく3つに分類されます.
成人のハチアレルギー患者数は,スズメバチ:アシナガバチ:ミツバチ=6:3:1です.
山林従事者ではスズメバチ,アシナガバチ,養蜂場やイチゴ栽培従事者ではミツバチによる刺傷事故が多いようです.
<アナフィラキシー>
ハチ刺傷によるアナフィラキシー反応は,ハチ毒抗原が特異的IgE抗体と反応して起こります.
症状が軽い場合には蕁麻疹や紅斑などの皮膚症状のみですが,アナフィラキシー反応が進むと吐き気などの消化器症状や血管性浮腫が起きます.
さらに進むと気道浮腫による呼吸困難や喘鳴などの呼吸器症状を呈し,最重症の場合にはショックに陥り血圧低下や意識消失に起こし,死に至る場合があります.
これらの症状は多くの場合ハチ刺傷の30分以内に生じ,一般に症状発現までの時間が短いほど重症です.
ハチ刺傷により全身症状を認めた人が再刺傷を経験した場合,前回刺傷時よりも症状が悪化することが多いと報告されています.
また,刺傷部位の腫れが広範囲に数日間続く場合には,再刺傷時に強い全身症状を起こす確率が高くなります.
成人に比べ小児では,全身の蕁麻疹や血管性浮腫などの皮膚症状だけの場合が多く,ショックに至る例は少ないと報告されています.
また,小児ではハチ再刺傷を経験した場合の全身症状の発現頻度は10%程度で,成人に比べ再現性は低いようです.
<ハチに刺されないようにするには?>
ハチ刺傷を回避するために,屋外での活動時には,長そで,長ズボン,手袋などを着用しましょう.ハチは黒い色や甘い臭いに誘われるので,黒い衣服の着用や香水はしない方が無難です.
ハチが近づいて来たら,顔を下向きにして,目を閉じ,じっと動かないようにしましょう.ただし,ハチの数が増えて攻撃が始まった場合には,その場から逃げましょう.殺虫スプレーを使用してもいいでしょう.
<ハチに刺されたら?>
ハチに刺されて毒針が残った場合には,直ちに爪などで除去してください.皮膚に残った毒針を強く押したり,深く押し込んだりしないでください.ハチ毒吸引器をもっている場合はハチ毒を吸い出してから,患部を冷やします.
手足を刺された場合には心臓に近いところを縛るなどの処置を行います.抗ヒスタミン薬などを医師から処方されている場合には,直ちに服用してください.過去にハチ刺傷によるアナフィラキシーを経験している場合,全身性のアナフィラキシーあるいはアナフィラキシーショックが起きた場合には,直ぐにエピネフリンの注射が必要になります.
アレルギー体質の人やハチに刺された経験がある人は,ハチ刺傷事故に特に注意が必要です.野山での作業をする機会が多い人は,エピネフリン自己注射キット「エピペン」を常に携帯することをお勧めします.
「エピペン」は講習を受けた医師がいる医療機関で処方を受けることができます.「アナフィラキシー医療機関リスト:http://www.anaphylaxis.jp/list/index.html」に処方可能な医療機関が掲載されており,当院も登録されています.必要な方はご相談ください.
<アナフィラキシー>
アナフィラキシーとは,食物(鶏卵,牛乳,小麦,そば,ピーナッツなど),薬物(抗生物質,非ステロイド消炎鎮痛剤,抗ガン剤,ワクチン,造影剤など),ハチ毒(スズメバチ,アシナガバチ,ミツバチ)などが原因で起こる即時型アレルギー反応の総称です.
皮膚(発赤,かゆみ,じんましんなど),呼吸器(息苦しさ,口腔のかゆみや違和感,呼吸困難,喘鳴,くしゃみなど),消化器(嘔吐,腹痛,下痢など),循環器(血圧低下,動悸など),神経(意識障害など)など多臓器に症状が現れ,ときにショックを引き起こします.
こうした生命をおびやかす危険な状態をアナフィラキシーショックと呼びます.
<エピネフリンの投与>
全身性のアナフィラキシーあるいはアナフィラキシーショックが起きた場合には,エピネフリンの注射が必要になります.
ハチ毒アナフィラキシーにおけるエピネフリンの効果を検討したところ,ハチ刺傷からエピネフリン投与までの時間が短いほど救命率が高くなることが明らかになっています.
アナフィラキシーが急速に進行してショックに至るような場合には,医療機関に搬送してから処置をしていたのでは間に合いません.
<エピペン>
現在,エピネフリン自己注射キット「エピペン」が発売されており.食物,薬物,ハチ毒などによるアナフィラキシーの補助治療剤として適応が認められています.
過去にアナフィラキシーショックに陥ったことがある方はあらかじめ医療機関で処方を受け,携帯した方がよいでしょう.
「エピペン」は,あらかじめ注射針,容器,薬液が一体となっており,使用時に安全キャップをはずし,大腿部外側に押し当てるだけでエピネフリンの投与が可能です.薬液は一定量しか注入できないように設計されており,過量投与の心配はありません.
衣服の上からでも投与できる構造設計になっています.
詳しくは,「エピペンホームページ:http://epipen.jp/index.html」をお読みください.
「エピペン」は講習を受けた医師がいる医療機関で処方を受けることができます.
「アナフィラキシー医療機関リスト:http://www.anaphylaxis.jp/list/index.html」に処方可能な医療機関が掲載されており,当院も登録されています.必要な方はご相談ください.
<アレルギー検査とは?>
現在,最も一般的に用いられているアレルギー検査は,血液中のIgEを調べるものです.IgEは採血をするだけで結果が分かり,簡便であることから普及しています.
アレルギー検査にはこのほかにパッチテスト,スクラッチテスト,吸入試験,負荷試験などがあり,それぞれ目的が異なります.IgEの結果だけでアレルギーの全てが分かるわけではありません.御注意ください.
<IgEとは?>
IgEは免疫グロブリンのひとつです.抗原が体内に侵入すると,血中IgEがマスト細胞と結合します.マスト細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出され(脱顆粒),粘膜や皮膚に作用して,さまざまな症状を引き起こします.一般的には血中IgE値が高いほど,アレルギーが強いと判断されます. 
検査では,血液中の総IgE値と特定の抗原に対する特異的IgEを測定します.検査の項目は,年齢や症状,問診などにより決定します.例えば,ネコを飼育していればネコ皮屑を,3月にくしゃみがひどければスギ花粉を,卵を食べて蕁麻疹が出れば卵白に対するIgEを調べます.
表の上部分には,「特異的IgE(IgE RAST)」の結果が記載してあります.
どのような抗原に対してどの程度のアレルギーがあるかを示します.
6点満点で,0点が陰性.1点が疑陽性, 2点以上が陽性です.6点が最もアレルギーが強いことを示します.
表の下部分には,血液中のIgEの総量(IgE RIST)が記載してあります.
IgEの高値はアレルギーが強いことを示します.
正常値は,1歳未満:20 U/ml以下.1-3歳:30 U/ml以下,4-6歳:110 U/ml以下,7歳以上:170 U/ml以下です.
<食物アレルギーについて>
一概には言えませんが...
1.検査が陽性だから,必ずしもその食品を食べていけないわけではありません.検査が陽性でも,食べて明らかに蕁麻疹が出る,口のまわりが赤くなる,のどがヒューヒューいう,アトピ−性皮膚炎が明らかに悪化するなどの症状を引き起こさない食品は,食べても差し支えありません.
2.検査が陰性でも,その食品を食べた場合に100%安全というわけではありません.検査が陰性でも,前項1.に示したような症状を引き起こす食品は食べないでください.
3.食物系アレルギーの検査は,生後2-3カ月は陰性で,離乳食の開始に伴い陽性になり始め,その後免疫能の発達に伴い陽性のものが増えたり強陽性になったりします.
2歳を過ぎると腸管粘膜が成人とほぼ同様に発達するので,数年すると陰性化するものもあります.食物アレルギーの検査結果は,0-2歳では半年から1年くらいで変化することがあります.
4.アレルゲンによって陽性が出やすいものと出にくいものがあります.
卵白,卵黄は陽性になりやすく,米は陽性になりにくいという傾向があります.
5.卵白・卵黄と鶏肉(←親子),大豆と醤油(←原料は同じ)の抗原性は同じではありません.
6.卵白3点が半年後に2点になっても誤差の範囲内です.1,2点の変動に一喜一憂することは意味がありません.
<吸入アレルギーについて>
一概には言えませんが...
1.検査が陽性だから,必ずしもその物質が気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎を直接引き起こすとは限りません.しかし,検査で陽性を示した物質は,上記の症状発現や悪化に関与する可能性が高いので,環境整備には十分に留意しましょう.
2.検査が陰性でも,その物質が100%無関係であるとは言い切れません.検査が陰性でも,気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎を引き起こすと考えられる物質はなるべく避けてください.
3.吸入系アレルギーの検査は,乳児期前半は陰性のことが多く,乳児期後半から幼児期にかけて陽性を示すようになります.気管支喘息のお子さんでは,1-2歳前後にハスウダストやダニに陽性を示すようになります.その後強陽性になったり,陽性を示す物質が増えたりします.
4.吸入系アレルギーの検査は,一旦陽性になると,その後陽性が持続することが多いようです.乳幼児期は比較的短期間で陽性になることがあるので,半年後あるいは1年後に検査が必要になることがあります.
しかし,学童以上では一旦陽性を示した場合にはその後も陽性が持続するので.半年から1年に1度同じ物質に対するアレルギーを繰り返し検査することはあまり意味がありません.
5.ハウスダストやダニに対して陰性だから気管支喘息でないということではありません.小児喘息のうちの約10%は非アトピー型喘息で,発症にアレルギー反応があまり関与しません.乳幼児では免疫能が未熟なために,実際にはアレルギーがあるのに検査で陽性を示さないことがあります.
6.ハウスダスト3点が3年後に2点になっても誤差の範囲内です.1,2点の変動に一喜一憂することは意味がありません.
<よく訊ねられる質問>
Q.検査でダニやハウスダストにアレルギーがないので,気管支喘息ではないですね?
A.そうとは限りません.気管支喘息の約10%は非アトピ−型喘息といって,発症にアレルギーが関与しない場合があります.乳幼児では免疫能が未熟なため,アレルギーがあっても検査では陽性を示さないことがあります.
Q.検査で卵白が陽性でした.卵は食べてはいけませんか?
A.卵を食べても蕁麻疹の発現,アトピ−性皮膚炎の悪化がなければ食べて差し支えありません.乳児の場合にはどうしても卵を与える必要はないので,1才を過ぎたらまず過熱した卵黄を少量与え,その後卵白に進んだ方が無難でしょう.
Q.検査でアレルギーがあるうちは,気管支喘息やアトピ−性皮膚炎の治療が必要でしょうか?
A.そうとは限りません.検査が陽性でも,必ずしも治療が必要とは限りません.
2002年4月に,「平成13年度・厚生労働省食物アレルギー研究班・全国食物アレルギー即時型反応疫学調査結果(主任研究者:昭和大学小児科・飯倉洋治教授)」が発表され,結果は以下の通りでした.当院も2000年度より本研究の調査対象医療機関になっており,既に数例報告しています.
集計対象は2434例でした.内訳は,男57.0%.女42.3%,不明0.7%でした.年齢分布は,0歳が29.8%,1歳が17.8%で,0-1歳だけで全体の47.6%を占めていました.以降加齢とともに漸減し,6歳までに75.5%が,8歳までに79.7%が集積していました.一方,20歳以上の成人も10.7%に達していました.
抗原別頻度は,鶏卵37.5%,牛乳12.7%,小麦8.5%,フルーツ5.4%,ソバ4.7%,魚類4.5%,エビ4.3%,ナッツ類3.6%,魚卵2.3%,肉類2.1%,大豆1.9%,ヨーグルト1.5%,チーズ1.3%,カニ1.0%,イカ1.0%,イモ類1.0%でした.
・フルーツの内訳は,キウイ37名,バナナ25名,メロン14名,モモ14名,ブドウ6名,リンゴ5名,サクランボ5名,イチゴ5名,以下オレンジ,マンゴ,パイナップル,ナシ,グレープフルーツ,レモン,ミカン,プルーンなどでした.
・魚類の内訳は,サバ18名,サケ1名,マグロ7名,アジ6名,イワシ6名,タラ6名,以下ウナギ,タイ,ブリ,ホッケ,サンマ,カマスなどでした.
・魚卵の内訳は,イクラが46名で大多数を占め,以下タラコ,カズノコなどでした.
・肉類の内訳は,鶏肉22名,豚肉15名,牛肉8名,鴨肉3名,羊肉1名でした.
・ナッツ類の内訳は,ピーナッツ54名,クルミ16名,アーモンド5名,カシュナッツ5名,以下マカダミアナッツなどでした.
症状は,皮膚症状(蕁麻疹,かゆみ,紅斑)が88.1%,呼吸器症状(咳,呼吸困難,喘鳴)が26.6%,粘膜症状(口唇浮腫,眼瞼浮腫,口咽頭掻痒感)が23.1%,消化器症状(嘔吐,腹痛,下痢)が12.8%,ショック症状(ぐったり,顔面蒼白,血圧低下,意識障害)が11.1%でした(重複回答あり).
・ショック症状を呈した抗原は,鶏卵64名,乳製品56名,小麦44名,ソバ16名,エビ10名,ピーナッツ10名,イクラ6名,キウイ5名,バナナ4名,モモ4名,大豆3名,イカ3名,ヤマイモ3名,カニ2名,豚肉2名,ウメ2名,ブリ2名,その他19名でした.
該当抗原に対するRAST値は,Class表示で,Class0が11.8%,Class1が7.0%,Class2が22.5%,Class3が29.1%,Class4が14.7%,Class5が7.4%,Class6が7.4%でした.
来院後の処置は,外来治療で改善が85.9%,入院の必要な場合が12.4%でした.
食物アレルギーには十分しましょう.心当たりの食品がある場合には検査が必要な場合があります.いつでも御相談ください.
<食物アレルギーとは?>
食物アレルギーは,「食物を摂取した後に,免疫学的機序を介して,生体にとって不利益な症状(皮膚,粘膜,消化器,呼吸器,アナフィラキシー反応など)が惹起される現象」と定義されます.
<頻度は?>
わが国における大規模調査の結果,食物アレルギーの頻度は乳児期で5-10%,学童期で1-2%です.年齢別には0歳が29.3%を占め最多です.その後,年齢が増すにつれ減少しますが,8歳以下で全体の80.1%を占めます.
20歳以上の成人例は9.2%で,決して少なくありません.
<原因食品は?>
原因食品は,鶏卵が最多で,乳製品,小麦がこれに次ぎます.以下,そば,魚介類,果物類,えび,肉類,大豆が上位を占めます.
<症状は?>
食物アレルギーの症状としては,皮膚症状が最多で,次いで呼吸器症状,粘膜症状,消化器症状がみられます.皮膚症状としては急性蕁麻疹や血管性浮腫が多く,通常は数分以内に起こることが多く,痒みを伴います.
消化器症状としては,悪心,嘔吐,腹痛,下痢が多く,食物摂取後数分から数時間で起きます.呼吸器症状としては,鼻汁,鼻閉,くしゃみなどのアレルギー性鼻炎の症状や喉頭狭窄,喘息発作などを起こします.
<アナフィラクシーショック>
これらの症状に比べ頻度は小さいですが,全身症状であるアナフィラキシーショックが起こることがあり,ときに死に至ります.
症状発現までの時間は様々ですが,典型的な場合には食物摂取後数分以内に起こります.しかし,消化吸収に時間がかかるような食物が原因の場合には,30分以上経ってから症状を呈する場合があり注意が必要です.
初期症状は,口唇,舌,咽頭部の腫れや痒み,吐き気や嘔吐です.皮膚,消化器,呼吸器症状のほかに,血圧低下,血管の虚脱,不整脈などの循環器症状を伴います.
致死的なアナフィラキシーの原因として,日本ではそば,魚介類,甲殻類,ピーナッツ,卵,牛乳,アメリカ合衆国ではピーナッツ,種実類,魚介類,卵,牛乳などがあげられます.
<食物アレルギーは治るの?>
乳幼児期に食物アレルギーを保有していた小児は,70%程度は3歳頃までに耐性を獲得し,原因食物を摂取しても症状を起こさなくなります.
一方,年長児から成人になって発症した食物アレルギーや,そば,ピーナッツなど特定の食物により強いアナフィラキシーが起こるような例では,耐性を獲得することは少ないです.
<化学物質過敏症・シックハウス症候群とは?>
化学物質過敏症は,「大量の化学物質に暴露されたあと,あるいは長期慢性的に化学物質に暴露されたあと,次の機会に通常では何ら影響のないごく低濃度の同種あるいは多種類の化学物質に暴露された時に,多臓器にわたって様々な不快な症状を呈する疾患」と定義され,
(1)症状の再現性があること,
(2)微量の化学物質に反応すること,
(3)関連性のない多種類の化学物質に反応すること,
(4)原因物質の除去で改善あるいは治癒すること,
(5)慢性的状態であること,
(6)症状が多臓器にまたがること,
の6条件を満たすものをいいます.
化学物質過敏症は,化学物質暴露の既往があること,症状が多臓器にわたること,症状を説明できるような他の疾患が除外されること,症状が慢性であること,が特徴です.
一方,シックハウス症候群は,健康被害を及ぼすような室内空気質に暴露されたことがあること,そのような暴露をきっかけに健康被害が生じていること,汚染された室内気から離れると症状が消失もしくは軽減すること,他の原因による疾患が除外されていること,が特徴です.
化学物質過敏症とシックハウス症候群の概念は,オーバーラップする部分がありますが,必ずしも同一ではありません.シックハウス症候群では,室内気の関与が強調されていることが特徴です.
<なぜ近年問題になってきたのか?>
家を建てる時の考えが「省エネ,高気密」になったことが最大の原因です.一旦冷暖房した空気をいつまでも室内に留めるため,換気が少なくなります.このため.壁,床,天井などに使われた建材から発散された化学物質がいつまでも室内気にある一定の濃度で滞留してしまいます.
化学物質暴露は,自宅だけなく,職場や学校でも起きています.
<原因は?>
化学物質過敏症・シックハウス症候群の原因物質としては,ホルムアルデヒド,トルエン,キシレンの3つが重要です.ホルムアルデヒドについて特に厳しい規制が設けられています.
これらの物質は,塗料,洗浄剤,ワックス,農薬,接着剤,化粧品,家具,衣類,開放型燃焼器具,たばこの煙に含まれています.また,合板,断熱材,フローリング,ビニール壁紙,ニスなどの建材にも含まれています.
さらに,木材の保存剤,防蟻剤,防燃・防災加工してある絨毯やカーテン,防虫加工してある畳などにも含まれています.
<臨床像は?>
1.化学物質過敏症・シックハウス症候群の70%は女性が占めます.とくに40歳代の女性に多いという特徴があります.
2.化学物質過敏症・シックハウス症候群の患者の84%は,なんらかのアレルギー疾患を持っています.アレルギー性鼻炎単独合併例が32%,アレルギー性鼻炎+他のアレルギー性疾患の合併例が32%で,アレルギー性鼻炎との重複が多いのが特徴です.
<食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは?>
特定の食物摂取後の運動により,全身の蕁麻疹(じんましん),呼吸困難,血圧低下,意識障害などのアナフィラキシー症状が起こるものを,「食物依存性運動誘発アナフィラキシー(food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)」と呼びます.
FDEIAが起こるのは,特定の食物摂取から運動までの時間が4時間以内です.食物摂取から4時間以上経過すると運動をしてもFDEIAは起きなくなります.
原因食物の摂取量や運動量が多いから症状が出現しやすいというわけではありません.食物摂取量や運動量が少なくても,症状が出現することがあります.
発症回数は2回以上が70%以上で,頻回に発症する症例が少なくありません.
<原因食品>
原因食物は,小麦が60%,甲殻類(エビ,カニ,イカなど)が30%を占めますこのほかに,果物やナッツ類などが原因になることがあります.
<症状>
10-15mm程度の蕁麻疹の出現に続き,喘鳴,喉頭浮腫,呼吸困難などの呼吸器症状や悪心,嘔吐などの消化器症状を呈します.血圧低下,虚脱,意識消失などアナフィラキシーショックに至る場合もあります.
<検査>
病歴の十分な聴取が診断をする上で最も重要です.原因食物に対する特異的IgEの陽性は診断の参考にはなりますが,確定診断にはなりません.原因食物の摂取と運動による誘発試験の再現性は低いのが特徴です.
<予防>
「原因食品を食べたら運動しない,運動するなら原因食品を食べない」ことを徹底されることが大切です.
<治療>
運動中に蕁麻疹などの皮膚症状が出現した場合には,運動を中止し抗ヒスタミン薬を内服し,医療機関を受診してください.抗ヒスタミン薬をいつでも服用できるように携帯してください.重篤な症状が発現した場合には,直ちに医療機関を受診しなければなりません.